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体育館の耐震対策はどのようなことが行われているのか?
日頃から多くの競技者で賑わう体育館。
誰もが、その安全性について疑問を持つことは無いであろう。
しかし東日本大震災の時に照明器具・天井材ばかりでなく、バスケットボール器具までもが落下してしまったことはご存知だろうか?
耐震基準をもとに耐震化されていたにも関わらずだ。
まだ、記憶に残っている方も少なくないと思う。
このままでは危険であるため、文部省の文教施設企画部が非構造部材の耐震化を推進している。
体育館は、地域での避難場所の役割も持っていることから安全・安心は第一でなければならない。
今、急速に落下防止対策が進んでいる。
本日は、どのような対策をしているのか、どのような耐震化が行われているのかをお伝えしていきたい。
文部科学省は、阪神淡路大震災の被害を踏まえ、学校施設の新築や耐震改修の際には、設計用地震力の割り増しや構造耐震指標の割り増しなどで、余裕のある設計を行うよう求めてきた。
平成25年8月には「学校施設における天井等落下防止対策のための手引き」を策定した。
これは、交通省が検討してきた対策の技術基準の内容をまとめたもので、大事故が起こりやすい体育館も含まれる屋内運動場の天井落下防止対策の手引き書である。
ここでは、非構造部材の耐震対策として、天井の高い屋内運動場では、天井部から落下した場合に大きな事故の危険のみならず被災時には、避難住民の生活の場となることから緊急性をもって優先的に対策を講じる必要がある、としている。
国公立学校における構造体の耐震化及び体育館等の吊り天井の落下防止対策については、平成27年度末までの完了を目指して取り組みを進めてきた。
その結果、各地方公共団体等の個別の事情により取り組みが遅れているものを除けば、概ね完了した状況である。
他方、吊り天井以外の非構造部材の耐震点検及び耐震対策については、取り組みが十分には行われていない状況である。
非構造部材とは、柱、梁、床などの構造体でなく、天井材や外壁(外装材)など、構造体と区別された部材を「非構造部材」と呼び、体育館においての非構造部材とは、天井・窓ガラスはもちろんのこと、設備機器、内壁(内装材)、照明器具、バスケットゴールなどが挙げられる。
先の震災では、耐震化が完了した体育館構造体の被害は極めて少なかったが、非構造部材の被害は甚大なもので多くの学校施設においては、天井材が全面的にらっかした事象や部分的に落下した事象など落下被害が多く見られた。
屋内運動場の天井被害は150件以上で、天井被害の約74%が脱落によるもので新耐震基準の施設、耐震補強済みの施設でも天井が全面崩落した事例が多数見受けられた。
以上のことから、致命的な事故が起こりやすい体育館の非構造部材は、緊急性をもって優先的に対策を実施すると共に構造体の耐震化が図られている施設であっても天井等の落下防止対策が必要である。
非構造部材の耐震対策
屋内運動場の天井等の落下の危険性、対策等を判断するには専門・技術を有する学校設置者が責任を持って点検を行い、必要な対策を実施することが必要である。
点検の結果は、学校との間でも情報の共有を図ることが重要である。
また、落下の危険等がある場合は、落下防止対策を速やかに実施する必要がある。
文部科学省はさらに「屋内運動場等の天井等落下防止対策事例集」にて各学校施設設置者における天井等落下防止対策の参考となる事例集を作成した。
耐震について点検から対策の実施までを各手順に分けて、解説している。
天井の落下防止対策は、天井撤去、天井の補強、天井の撤去・再設置、落下防止ネットの設置などがあるが、体育館によっては、大規模改修工事となると大きなコスト、工事日数が掛かってしまうため、現実的に難しい施設もあるようだ。
ここでは、具体的な点検方法・対策法を説明させていただく。
天井の耐震点検
これらの大半は、外観からの目視などにより点検が可能である。
壁際のクリアランス(隙間)の有無天井の耐震措置に関する特記事項の有無
斜め部材の有無
屋根形状と天井形状の比較による吊り長さの違い対策としては、天井を撤去、地震被害の発生の危険性のある天井部材を解体・撤去し、大規模空間天井の耐震安全性を確保する方法。
天井補強による耐震化
脱落対策にかかわる技術基準を踏まえて、耐震的な仕様により性能を高める方法。
天井撤去及び再設置
全面を撤去した後、目標性能に適合した天井を耐震設計しなおすなどしたうえ、天井を再設置する方法。
落下防止ネット等の設置
落下防止ネットやワイヤ、ロープなどにより天井落下を防止する方法。
などの手法がより確実な安全確保方策として挙げられる。
しかしながら、補強による改修工事が実質的に困難であったり、天井の再設置は相当なコスト・工期が掛ることなどから「学校施設における天井等落下防止対策のための手引き」では、既存天井の撤去を中心とした落下防止対策が、より確実で安全な対策として促している。
それに伴い、既存天井が確保していた断熱・音響・空調などの各種環境条件についての対策も行う必要がある。
では、落下防止ネット設置を例に挙げて対策・留意点を紹介する。
落下防止ネットの設置
落下防止ネットの設置は、落下防止の有効な対策の一つであるが、
設置にあたっては、技術的な課題も多い。
また、落下防止ネット対策は、落下途中の天井を捕捉するためのものであり、
基本的に落下自体を防ぐ対策方法ではないということを留意しておく。
東日本大震災の被害を踏まえ、体育館等の吊り天井については、補強による改修工事が実質的に困難であり、児童生徒等の安全に万全を期す観点から、撤去を中心とした対策を求めてきた。以下のような検討が必要となる。
各部材・施工方法
天井材の重量に加え、落下時の衝撃力を構造耐力上十分に伝えられるように、ネット・ワイヤ・ロープ等の強度と施工方法を十分に検討する必要がある。
ネットの形状
ネットの隙間から落ちた落下物が人身に危害を与えないように、ネットの目合・強度・耐久性を検討する必要がある。
ワイヤ取付位置
天井下部への落下防止ネット設置の場合、ネットを支えるワイヤ・支持金物の取付位置が重要となる。
照明器具、バスケットゴール等の落下防止対策
体育館の大規模な空間の照明器具、バスケットゴール等高所に設置されているものは、吊り天井の有無に関係なく
総点検を実施し、必要な落下防止対策が必要となる。
吊り下げ式バスケットゴール点検方法
吊元の仕様やフレームの接合部、ワイヤー、バックボードの取り付け部分の状態を目視により確認する。
竣工当時の取付詳細図があれば、それも伏せて確認するのが良い。
必要により移動足場を用いる。
確認がOKであれば完了とし、対策が必要であれば、耐震補強・落下防止対策を行う。
壁面式バスケットゴール点検方法
フレームの接合部やバックボードの取り付け部分・壁面部分の状態を目視により確認する。
竣工当時の取付詳細図があれば、それも伏せて確認するのも良い。
必要により移動足場を用いる。
確認がOKであれば完了とし、対策が必要であれば、耐震補強・落下防止対策を行う。
耐震補強・落下防止対策例
上部架台のブレスの補強、防振金具を取り付ける。
ワイヤロープ・滑車の交換。
電動引揚げ装置のモーターカバーに外れ防止金具の取り付け。
バスケット台と専用梁、バックボードの台座と支持支柱ををワイヤで締結する。
落下時の緩衝装置を新設する。
などの対策方法がある。
今後も、全国各地で大規模な地震が起こる可能性は高いため
学校施設における安全性の確保は急務であるといえるだろう。
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