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霜鳥 裕達
【資格】2級施工管理技士/1級フローリング技能士/木製床管理者/体育施設管理士/有機溶剤など【仕事】床職人歴20年以上になります。まだ小さかった頃、母親が自分を背中にしょってダボ打ちをしていたそうです。【想い】大切な会社、携わる方と共に成長し、幸せにしていきたいです。またホームページやメールマガジンでより良い情報をお届けします。もっと分かりやすく伝わる記事が書けるよう頑張ります。

体育館床材体育館床は、劣化が進むと様々な損傷が発生します。
損傷にはいくつかの種類があり、それらをしっかりと把握しておけば、定期チェックなどの際に体育館床の状態を的確に判断することができるでしょう。
体育館床の損傷は、放置するとケガや事故の原因となるため、損傷の種類・度合いを把握して適切な処置ができるようにしておくことが大切です。

そこで、当記事では、体育館床に発生する損傷の種類や発生する要因などを解説します。損傷についての理解を深め、安全に使える体育館を維持することに役立ててください。

体育館床に発生する損傷の種類

体育館床に発生する損傷の種類は、以下の通りです。

【体育館床に発生する損傷の種類】

  • キズ・凹み
  • 塗装の摩耗・剥がれ
  • 割れ・欠け・表面剥離
  • ダボ抜け
  • フロア材の段差

これら5種類の中でも特に、割れや欠け・剥離はいち早く察知したい損傷です。
割れた箇所をきっかけに劣化がさらに悪化したり、事故が発生したりするので、安心・安全の体育館環境を維持するためにも、しっかりと把握し直せるときに直ておきましょう。

キズ・凹み

キズや凹みは、体育館内で最もよく見かける損傷です。
競技道具・スポーツ器具を運んだ際や、設備を設置したりする際に損傷させてしまうことが多く、部活動などで毎日利用する体育館では比較的多くのキズや凹みが見られます。
キズや凹み、損傷がひどいものだとフローリングの木材自体がえぐれてしまっているようなケースもありますが、程度は小さいものから大きいものまでさまざまです。

すぐに対処すべきかどうかの判断が一番しにくい損傷の種類で、発生している量や程度によって、業者に依頼すべきかどうかを判断することが求められます。

塗膜の摩耗・剥がれ

塗装の摩耗や剥がれは、体育館床に施されているコーティング剤が擦り減ったり剥がれてしまう損傷です。
コーティング剤が無くなりフローリングの地肌が露出してしまうと、そこから水分を吸収して劣化を促進してしまうので、見つけた際には早急に対処しましょう。

また、塗膜が摩耗しているかどうかは、ぱっと見ではわかりにくい点に注意が必要です。
塗膜が剥がれているかどうかを判断する基準として、部分的に滑りやすくなっていないか、他の部分と比べて光沢が減少していないかをチェックするようにしましょう。

割れ・欠け・表面剥離

割れや欠け・剥離は、もっとも注意しなくてはいけないレベルの損傷です。
摩耗などで床が滑りやくなるよりも危険で、ひどい場合にはササクレができてしまうことがあります。

ひどい割れや欠けは、鋭利で尖った状態になることがあり、むき出しの状態で床に置かれているのと同じです。危険を回避するためにも、迅速な対処が必要となるでしょう。体育館利用者の安全を守るためにも、割れ・剥離を見つけた際は、すぐに専門業者に相談・修理依頼をするようにしてください。

ダボ抜け

床の強度を高めるために、フローリングに10㎜ほどの穴を開けて、ビスや釘を打ち込む特殊張り工法があります。その10㎜ほどの穴には、ダボという木栓が埋め込まれています。
一般的にダボは、接着剤で床の穴に打ち込まれて固定されていますが、時の経過と共に接着が弱くなり抜けてしまうダボがあります。そのままにしておくと釘頭がスポーツフロアの表面に出てくることがあり、ケガの原因になっています。
ダボ穴のダボがなくなっている場所がないか定期的にチェックするようにしましょう。

フロア材の段差

スポーツフロアと床金具の間や、フローリングと換気口の間で段差が生じることがあります。
大きな段差になると、つまずきや転倒の原因になります。中には、床金具や点検口が開かなくなってしまう場合もあります。そのままにしておくと、床金具の割れも引き起こす可能性があります。
危険な段差は取り除く必要があります。

 

体育館床の損傷は事故を引き起こす可能性がある

体育館床の損傷は、事故を引き起こす可能性があるため、注意が必要です。
特に、割れや剥離による木材のササクレなどは、重大事故をひき起こすきっかけにもなります。
メンテナンス時に細心の注意を払い、チェックをするようにしましょう。

過去には実際に、割れや剥離が原因で発生した事故があります。
消費者庁の消費者安全調査委員会(消費者事故調)は、運動中に滑り込んだ際、はがれた床板が体に刺さって怪我をする事故が、2006~2015年の約10年間で10件起きていたとする報告書を公表しています。

ひどいケースでは、バレーボールのレシーブ練習中に滑り込み、はがれた床板の一部が腹に刺さって内臓を損傷した事例もありました。

参考:消費者庁 消費者安全調査委員会「体育館の床から剝離した床板による負傷事故について

体育館床に損傷が発生する要因

体育館床に損傷が発生する要因を把握し、損傷が発生しないよう事前に対策を講じることも、体育館を管理・運営していくうえでは重要です。安全な体育館を維持するため、できる限り発生要因を押さえて損傷の発生を防ぎましょう。

【体育館床に損傷が発生する要因】

  • 日常清掃・メンテナンスの不足
  • 外部からの異物持込・重量物の運搬
  • 塗膜の劣化による保護性能の
  • ラインテープ剥がしによる床材表面の剥離
  • 水分やワックスを使った清掃

日常清掃・メンテナンス不足

損傷が発生する要因の一つに、日常清掃・メンテナンスの不足が挙げられます。
当たり前のことですが、毎日のように使用されている体育館床は、清掃や定期点検などを怠れば、摩耗していく一方です。「床を損傷しにくい状態で保つ」という意識のもと、日常清掃やメンテナンスをしっかりと行い、損傷の発生を防ぎましょう。

外部からの異物持込・重量物の運搬

外部からの異物侵入・重量物の運搬によって、床が損傷するケースもあります。異物侵入は、主に砂が挙げられ、人が出入りする際や換気で窓を開けているときなどに侵入します。特に校庭と隣接する体育館は、砂が入り込みやすいです。
細かい砂は、シューズの裏についたりするとヤスリのように床を傷つけてしまうので、注意が必要です。

また、重量物の運搬は、主にバレーボールのネットを付ける支柱の運搬や、移動式バスケットゴールの運搬などが挙げられます。鉄製の重量物は、少しでも引きずると、その部分の塗装がごっそり剥がれてしまいます。体育館内で使用する設備次第で損傷のしやすさが大きく変わるので、どのような設備を使っているのか把握したうえで、定期点検などを行うと良いでしょう。

塗膜の劣化による保護性能の

ラインテープ剥がしによる床材表面の剥離

塗装の摩耗やラインテープ剥がしによって、損傷が発生するケースもあります。どちらも塗装が剥がれたり、摩耗して薄くなったりすることで、損傷を誘発します。塗装の摩耗やラインテープを剥がすこと自体が、損傷の直接的な原因となるわけではなく、塗装が摩耗したりラインテープを剥がすことによって塗装が剥がれたりすることによって、劣化しやすい状態を作っているのです。

水分やワックスを使った清掃

体育館床の損傷を確認する際のポイント

ここまで、体育館床の損傷の種類・要因を解説してきました。それらを踏まえて以下では、メンテナンスの一つである定期点検の際に意識すべきポイントについて解説します。ポイントは、以下の通りです。

【体育館床の損傷を確認する際のポイント】

  • キズ・凹みが無いかをチェック
  • 塗装が剥がれている、もしくは摩耗している箇所が無いかチェック
  • 割れや剥離が発生している箇所が無いかチェック
  • 床鳴りが発生していないか

 

基本的には、損傷の種類でご紹介した5種類の損傷が発生していないかを確認する作業になります。損傷の種類を把握したうえで、チェックリストなどを作り、それぞれの損傷が発生していないかをチェックしてください。

また、床鳴りのチェックをすることも、損傷を確認するうえで大切なポイントです。床鳴りとは、床の上を歩いたときに、「キシキシ」といった音が鳴ることで、床材に異常が発生している可能性を示唆します。もし音がする場合は、見た目ではわからなくても床材自体に異常が発生している可能性があるので、業者に点検してもらうことを検討しましょう。

体育館床の損傷を防ぐにはメンテナンスが不可欠

体育館の床を安全な状態で維持するためには、損傷の発生を防ぐことが大切です。そして、損傷の発生を防ぐためには、日頃のメンテナンスが不可欠です。

メンテナンスには、損傷を防ぐこと以外にも、「清潔な状態の維持」「競技の質を低下させない」といった目的があります。これらの目的を達成することで、安全かつ信頼のおける体育館運営が実現するため、メンテナンスはしっかりと取り組んでいきましょう。

メンテナンスの方法

メンテナンスの方法は、大きく「清掃管理」と「保守管理」の2つに分類することができます。それぞれを意識してメンテナンスに取り組むことで、清潔感と安全性の両方を維持できるようになるでしょう。

【メンテナンスの方法】

  • 清掃管理

体育館床の清掃が主となるメンテナンスです。清掃管理には、体育館を使用する前後にフローリング用のモップで乾拭きする日常清掃と、日常清掃では取り切れない頑固な汚れを年3~4回の間隔で掃除する特別清掃があります。

  • 保守管理

安心・安全に使用するために管理をすることです。保守管理には、水分や土砂・ワックス類の持ち込み防止や土足禁止などを管理する保護管理、床金具の浮きやフローリングの破損、床のすべりを補修する補修管理があります。

まとめ

体育館の床は、さまざまな要因によって損傷が発生します。損傷の種類には「キズ・凹み」「塗装剥がれ」「割れ・剥離」などがあり、これらは体育館の安全性を損なう可能性があるので、見つけ次第、早急に対処することが求められるでしょう。

また、損傷の中でも、割れ・剥離は特に気を付けなくてはいけない損傷です。割れ・剥離は、放置しておくと重大な事故を引き起こす可能性があり、実際、過去には重大事故を起こした事例もあります。

体育館利用者の安全を守るためにも、体育館の管理者は日頃のメンテナンスをしっかりと行い、万が一の事故が発生しないように管理を行なっていきましょう。