「昔は学校の床ってピカピカだったのに、最近はツヤがない…」と感じたことはありませんか?
実はそれ、ワックスがけが禁止されたからなんです。かつては、ワックスを塗ることで床をきれいに見せ、保護するのが当たり前でした。しかし今では、多くの学校で“ワックスがダメ”とされています。
背景には、床が劣化してはがれたり、児童や生徒がケガをするなど、安全上の深刻な事故が増えたことがあります。
文部科学省や消費者事故調査委員会も「体育館などの木製床にワックスを使用しないように」と通達を出しており、今では乾拭きや専用メンテナンス剤による管理が推奨されています。
この記事では、学校でワックスが禁止される理由や、実際に起きた事故の事例、そして現在の正しい清掃方法まで、分かりやすく解説します。
学校でワックスがダメな最大の理由は「床材の劣化と事故防止」
木製床は水に弱い構造
学校の体育館や廊下の床には、ブナやナラといった木材が使われていることが多く、これらの素材は水分を吸収しやすい性質を持っています。
ワックスには多くの場合「水」が含まれており、これが床板の目地からしみ込むと、木材が膨張します。乾くと縮むため、この膨張と収縮を繰り返すことで木の繊維が壊れ、反りやひび割れ、ささくれが発生するのです。
劣化が進むと、床の一部が浮き上がったり、角がめくれて靴や足に引っかかるなど、転倒やケガの原因になります。
つまり「きれいに保つために塗ったワックス」が、結果的に子どもたちの安全を脅かす行為になってしまうのです。
実際に起きた事故例
消費者事故調査委員会の報告では、2006年〜2015年の間に全国の学校体育館で床板が剥がれて刺さる事故が7件以上発生しています。
中には、剥がれた木片が児童の足に突き刺さり、出血や通院を要するケースもありました。
これらの多くが「ワックスがけや水拭きを繰り返していた体育館」で起きており、文部科学省は2017年に正式にワックス使用の禁止を通知しました。
剥離作業が床材を傷めるもう一つの理由
ワックスを塗ると、やがて「剥離(はくり)作業」が必要になります。
これは古いワックス層を薬剤で溶かして取り除く作業のことですが、ここにも大きな問題があります。
強い溶剤と大量の水が木材に悪影響
剥離剤にはアルカリ性の強い溶剤が含まれており、これが床の隙間から入り込むと、木材の接着層や下地まで傷めてしまう可能性があります。
さらに剥離作業では、大量の水を使って汚れや薬剤を洗い流すため、木が再び膨張し、乾燥時に反りが発生します。
このように、ワックスを塗る・剥がすというサイクルを繰り返すことで、床材の寿命が短くなり、数年で大規模な修繕が必要になることもあるのです。
実際の現場での課題
現場の清掃担当者からも「剥離後に床が波打った」「床が白く濁った」「板の継ぎ目が開いてしまった」といった報告が相次いでいます。
これらはいずれも、水と薬剤によるダメージが原因です。
つまり、剥離作業を必要とするようなメンテナンスは、体育館や学校床のような木材には適していないということです。
ワックス不要の床材が増えている理由
体育館床は“ノンワックス仕様”が普及
最近の学校や公共体育館では、ポリウレタン樹脂塗装(ウレタンコート)が施された床材が主流になっています。
これは、表面にあらかじめ耐久性の高いコーティングを施すことで、ワックスがけをしなくても美観と滑りにくさを両立できる素材です。
このウレタン塗装は、スポーツの動きを考慮して開発されており、滑りすぎず、グリップもしっかりあるため、バスケットボールやバドミントンなどでも安全にプレーできます。
つまり、ワックスを塗らないほうが性能を発揮できる設計なのです。
| 床材の種類 | メンテナンス方法 | 特徴 |
|---|---|---|
| 木製床(旧式) | ワックス+剥離作業 | 水分で劣化・反りやすい |
| ウレタン塗装床(新式) | 乾拭き+専用メンテナンス剤 | ノンワックスで滑りにくい |
| 合板+樹脂仕上げ床 | 乾式清掃 | 汚れに強く長寿命 |
メンテナンスの考え方も変化
以前は「ツヤがある=きれい」という意識でしたが、今は「安全で清潔」が重視されています。
見た目の光沢よりも、滑らない・長持ちする・清掃が簡単であることが評価される時代になっています。
現在推奨されている学校床の清掃方法
学校の床をきれいに保ちながら安全を確保するには、乾拭き中心の清掃と専用のメンテナンス剤が基本です。
乾拭きの徹底
日々の清掃では、ホコリや砂を取り除くためにダストモップやドライモップを使用します。
水拭きは厳禁ですが、汗や液体がこぼれた場合は、その都度すぐに乾いたタオルで拭き取ることが重要です。
水分を残さないことで、床の反りや変色を防げます。
専用メンテナンス剤の活用
文部科学省が禁止しているのは「水を含むワックス」であり、水分を使わないノンワックス型のメンテナンス剤は使用可能です。
これらはホコリを抑え、滑り止め効果もあるため、体育館などで安全に使えます。
代表的なメンテナンス剤には以下のような製品があります。
| 製品名 | 特徴 | 効果 |
|---|---|---|
| ノンスリップ | 防滑・静電防止 | 滑り防止・ホコリ付着軽減 |
| フロアコンディショナー | 水分ゼロ・即乾 | 木材を傷めずに安全維持 |
| ジムエース | スポーツ専用 | グリップ力を長期間キープ |
これらを専用モップで均一に塗布するだけで、床を美しく保ちながら安全性を確保できます。
まとめ
かつて当たり前だった学校のワックスがけは、いまや「危険行為」と認識されています。
床板の反り・ひび割れ・剥離事故は、児童や利用者の命に関わる問題であり、文部科学省が禁止を決断したのも当然の流れです。
これからの学校メンテナンスは、
- 水を使わない清掃
- 専用メンテナンス剤の活用
- 床材に合ったケア
この3つが基本になります。
もし「体育館の床が滑る」「どんなメンテナンスをすればいいかわからない」とお悩みであれば、ぜひ弊社にご相談ください。
学校や公共施設の現場経験をもとに、床の状態に合わせた最適なメンテナンス方法をご提案いたします。
“安全で長持ちする床”は、未来の子どもたちを守る第一歩。
その環境づくりこそ、私たち専門業者が果たすべき使命です。

































































































