体育館の管理といっても、床の状態をどう守るか分からない。
そんなご相談をいただくことがあります。
かつてのやり方である水拭きやワックス掛けは、今や文部科学省の通知によって原則禁止とされており、何をどうすればいいのか…
安全性と美観と長持ちを同時に達成したいという思いと、現場の現実の間で板挟みになっているあなたに必要なのは、正確な背景知識と、具体的に機能する代替策、そして現場に寄り添った提案です。
この記事では、なぜワックスや水拭きが禁止されたのかという根本的な理由から、文部科学省の通知内容の要点、今すぐ取り入れるべき安全なメンテナンス手法と主要製品の比較、現場での失敗を避ける運用の組み立て方、そしてなぜ弊社への依頼が現場の安心と結果につながるのかを、具体例を交えて解説します。
体育館を使うすべての人が「ここなら安心」と思える床を、守っていきましょう。
体育館でワックス掛けと水拭きが禁止された背景と通知の内容
禁止になった理由と事故の実態
体育館の木製床に対する従来の管理手法として一般的だったワックス掛けや水拭きが見直されることになったのは、それらが思わぬ形で床の劣化と事故リスクを高めていたからです。
水分が木材に入り込むと、乾燥時に収縮と膨張を繰り返し、木の繊維組織が破壊されて剥離、ささくれ、ひび割れなどの不具合を起こしやすくなります。
これにより、床板が浮いたり剥がれたりすることで跳ね返りの不均一や突起が生じ、競技中の転倒や体への衝撃が増幅される事故に直結しました。
一方、ワックスは一見滑り止めの役割を果たすように思われてきましたが、実際には残留によって表面の摩擦特性が不均一になり、滑りやすい部分と過度に引っかかる部分が混在して選手の足取りを不安定にし、転倒事故を増やす一因となっていたのです。
こうした事象を踏まえ、文部科学省は床板の剥離による負傷事故の原因を調査・総括し、従来の清掃方法の弊害を指摘する報告書を基に通知を出しました。
実際の事故例として、床の全面改修後数年以内にバレーボールやフットサル中に内臓裂傷や打撲といった重篤な負傷が発生した記録が複数挙がっており、この原因の一部に床板の剥離や表面の劣化があることが明らかになっています。
文部科学省の通知が求める具体的な取り組み
平成29年5月29日付で出された「体育館の床板の剥離による負傷事故の防止について(通知)」(平成29年5月29日付29施施企第2号)では、体育館の所有者および管理者に対して、従来の水拭きとワックス掛けを原則禁止とし、床材の老朽化のリスクを抑えた適切な清掃方法を文書化して関係者に周知徹底すること、日常および定期点検の実施と記録の保存、剥離等の兆候があった場合の迅速な応急処置、さらに長期的な改修計画を立てて実行し、その履歴を保管することが求められています。
通知文自体が学校施設だけでなく社会体育施設にも周知されるよう働きかけられ、都道府県・市区町村にも展開されています。
実態調査では適切な清掃を実施している施設が全体の6割前後で、通知内容を確認しながらも実行に差がある現場の課題も浮き彫りになっています。
通知の狙いを現場の優先順位に落とす
この通知が目指すのは単なる禁止ではなく、実質的に事故を防ぐための持続的で安定した環境をつくることです。
具体的には、木製床の性能を無理に上書きせず本来の摩擦特性を損なわない範囲で汚れを取り、グリップが落ちたときに安全に回復させ、剥離の兆候を見逃さない点検体制と即応性のある補修を持つことが求められています。
これを実現する鍵は、適切な代替策の導入と、現場ごとの運用設計にあります。
安全に使える代替としての製品と日常清掃のあり方
文部科学省の方針を守りながら床を整えるための新しい手段
ワックスや水拭きが原則禁止となった現場では、床の滑り感や見た目を放置しておくと利用者の安全性や信頼性に直結して悪影響を招きます。そのため水分やワックス成分を含まない、床のグリップ力を回復しながら素材を痛めない設計のメンテナンス剤が代替として注目されてきました。
これらは従来の「塗ると艶が出る」「一時的に滑りを変える」タイプではなく、床の摩擦特性を適正に戻す、あるいは維持するための科学的に設計されたもので、汚れ除去とグリップ保持を両立しながら木床の劣化要因を最小限にします。
併せて、日常的な清掃は乾拭きや専用の集塵機器を使ってほこりや細かいゴミを取り除き、床の表面を清潔に保つことで、異物による摩耗や見かけ上の滑り変化を防ぎます。
代表的なワックス代替え品
NONSLIPの機能と現場での即効的効果
NONSLIPおよびその強化版であるNONSLIP HYPERは、木製フローリングの滑り抵抗を回復させることを目的に設計された、ワックスや水分を含まないメンテナンス剤です。
床の表面に残るべたつきや不均一な摩擦ではなく、スポーツに適した安定したグリップを即座に再現し、選手のパフォーマンスを支えると同時に転倒リスクを下げます。
使用環境や磨耗の度合いに応じて標準タイプとより強力なタイプを使い分けることで、感触の微調整が現場で実現しやすく、直前の大会準備や日常的な回復処置として高い評価を受けています。
ANZENノンワックスがもたらす現場の安心と長期的保全
ヤブ原産業が展開するANZENノンワックスは、体育館の木製床に直接使える次世代のウォーターレス・ノンワックス製品として開発されており、文部科学省の通知に完全に適合した設計であることを前提にしています。
水分を一切含まず、ウレタン塗装本来の摩擦・反発を損なわずに滑りやすくなった床面をスポーツに適したグリップ力へと回復させるため、日常の管理の中に組み込むだけで床の老朽化要因を抑制し、怪我の防止に直結します。
使い方が簡便で専門業者を必ずしも必要とせず、施設担当者でも再塗布のタイミングを判断して継続的に使える設計という点で多くの学校・公共施設に採用されている背景があります。
DPCフロアドレッシングの役割と日常清掃との統合
DPCフロアドレッシングは、ウレタン塗装などが施された床の本来の性能を損なわずに日々の汚れを取り除き、滑りの安定を支える清掃補助剤として位置づけられます。
汗や油脂、ホコリの蓄積を効率よく除去し、床の見た目と感触を長期にわたって保つことが可能で、特に日々の利用が多い体育館では、定期的にDPCで清掃した上で必要に応じてNONSLIPやANZENで微調整するという複合的な運用が効果的です。
床面の清潔さを保ちつつ、滑り特性のブレを抑える役割を持つことで、運用の基礎を支えます。
補助的な製品の位置づけと複合運用の実例
上記の主要製品の他にも、特定の汚れに対応する松ヤニクリーナーや、保護・滑走制御を狙うプロテクトゼロ、ジムトップなどを使って部分的な前処理や耐久性補強を組み合わせることで、現場の状態に応じた精密な管理が実現します。
たとえば、長期間使用で一部だけ滑りの感触が変わってきたエリアには前処理として汚れを除去し、その後でNONSLIPを塗布してグリップを調整すると全体のバランスを崩さずに回復できます。こうした段階的、用途別の処置が安定運用の土台になります。
主要製品の比較表と現場での選び分け
| 方法・製品 | 水分・ワックスの有無 | 主な働き | 向く場面 | メリット | 注意点 |
|---|---|---|---|---|---|
| 従来のワックス掛け | 含む | 一時的な艶出し・滑り感変更 | 過去の慣習的運用 | 見た目の光沢 | 残留で摩擦ムラ、床材劣化、通知違反で事故リスク増加 |
| 水拭き | 含む | 表面汚れ除去(ただし浸透) | 過去の清掃習慣 | 簡単に使える | 木材膨張収縮による剥離・亀裂、通知違反 |
| ANZENノンワックス | 含まない | グリップ回復・抗菌 | 日常維持・競技前調整 | 安全性高い・簡便・継続使用可 | 塗布タイミング設計必要 |
| NONSLIP / HYPER | 含まない | グリップ調整・回復 | 老朽化した木床、直前調整 | 即効性・残留なし | ムラに注意、用途により強さ調整 |
| DPCフロアドレッシング | 含まない(塗装保護) | 汚れ除去・滑り安定 | 日常清掃 | 表面性能保護・清潔感向上 | 他剤との併用方法を整える必要あり |
この表を現場ごとの利用頻度、事故リスク、費用構造と照らし合わせて使い分けることで、床の状態を「その都度よみがえらせる」だけでなく、急激な変動を抑えて安定的に使い続ける基盤が築けます。
選び方と現場で失敗しないための判断基準
文部科学省通知適合性の最初のフィルター
製品を選ぶ段階で最も重要なのは、文部科学省の通知に基づいて水分やワックス成分を含まない設計であるかどうかを確認することです。
これにより、後から「やってはいけないことをやっていた」というリスクを避けることができ、安定したグリップの維持と床材の保護を両立させる第一歩になります。
床材との相性を見極める
木製フローリング、ウレタン塗装、既存の残留物といった現場の床の状態を踏まえて、どの製品をどのタイミングで使うかを決めないと効果の出方が大きくばらつきます。
たとえばウレタン塗装面ではDPCをベースにして汚れを落とし、その上でグリップ状態の変化があればNONSLIPで回復させるといった段階的な組み合わせが安定性を高めます。事前に小面積のテストを行い、滑り感や乾燥時間、表面の変化を確認することで本番でのトラブルを減らせます。
安全性と使いやすさ、ライフサイクルコストのバランス
単に“効く”製品を選ぶだけではなく、過度に引っかかるグリップが怪我の原因になることもあるため、滑りの調整性、抗菌・防汚の付加価値、現場スタッフが迷わず使える分かりやすいマニュアル、1回あたりの効果の持続期間を含めた総合評価が必要です。
安価でも何度も塗り直す手間がかかるものと、やや高めでも安定して長く効くものとでは、実際の運用コストと現場の負担が大きく違ってきます。
現場での運用設計と継続的な管理
点検から始まる塗布スケジュールの設計
床のグリップや汚れの状態は静的ではないため、定期的な観察と記録が必要です。週単位や月単位で簡易チェックリストを使い、滑り感、汚れ蓄積、ライン周囲の変化などを記録し、イベント前や季節変わり目、休館後などのトリガーに応じてANZENやNONSLIPでの補正、DPCでの清掃を組み込んだスケジュールを設計することで、床の状態の乱高下を防ぎ、継続的な安心感を築けます。
施工手順の標準化と品質維持のポイント
効果を最大化するには、まず異物や細粒を除去し、次に適切な量を均一に塗布し、完全に乾燥させるという基本手順を徹底することが重要です。
ムラを防ぐための用具選び、乾燥中の歩行制御、境界部の塗り残しの処理、既存の残留ワックスがある場合の前処理といった細部への配慮を標準作業手順に落とし込み、担当者全員が共有することでバラつきを抑えます。
利用者のフィードバックを含めた改善ループ
塗布後は定量的な簡易滑り試験と、実際に使う選手や教師などの感覚的フィードバックを組み合わせて状態を評価し、「数値上は適正だが実感にズレがある」部分を早めに修正します。
こうした現場の声を次のスケジュールや製品選びに反映させる循環が、床のコンディションを安定させる鍵になります。
弊社に依頼すべき理由と伴走型サポート
現場を起点にしたオーダーメイド設計
私たちは一律のテンプレートではなく、あなたの体育館でどのような利用者がどんな頻度で使い、どのような過去のトラブルや課題を抱えているのかを丁寧にヒアリングしたうえで、ANZENノンワックス、NONSLIP、DPCなどの製品をどう組み合わせて使うのが最適かを設計します。
たとえば部活動が集中する学校では大会前の集中回復スケジュールと日常の簡易チェックを分け、高齢利用者が多い施設では滑り感の変化を敏感に捉える観点で塗布頻度を設定するなど、現場の実態に即した管理プランを一緒に作ります。
施工と管理の見える化で継続性を担保
塗布した日時、使用した製品と量、滑り試験の結果、利用者からの声をまとめた管理記録をテンプレート化して現場に残し、担当者が交代しても状態と次のアクションを誰でも理解できる仕組みを提供します。
予兆となる微細な変化も蓄積されたデータから早期に検出し、対応の先手を打てる体制を整えます。
先回りの提案と定期的なフォローで信頼を積み重ねる
導入後も定期的に床の状態を共にレビューし、グリップの低下傾向や清掃の効率、使用履歴の変化を踏まえて次に必要な処置を提案します。
たとえば長期休館明けの不安定な滑り感を事前に想定して部分処置を行うなど、現場の「気づくのが遅れた」を防ぐ先回りのサポートによって、使う人の安心を継続的に守り、現場から「頼んでよかった」と言ってもらえる関係性を築きます。
よくある質問(FAQ)
Q: なぜワックスや水を使わずに滑り止め効果が出るのか
A: 従来のワックスや水拭きは表層の一時的な変化を与える一方で、残留や浸透によって床材を痛めたり摩擦のムラを生んだりしました。
これに対し、NONSLIPやANZENノンワックスのような製品は化学的にグリップ感を回復させる成分を用い、残留を残さずに安全かつ安定した摩擦特性に調整するように設計されているため、滑り止め効果を持ちながら床材の老朽化の要因を減らせます。
Q: どのくらいの頻度で処置すべきか
A: 体育館の使用頻度や季節変化、競技前か通常運用かによって異なりますが、状態を観察する簡易なチェックを週や月ごとに行い、グリップ感の低下を感じたタイミング、大会やイベント前、休館後などを契機にNONSLIP系で回復を行い、日常の汚れはDPCで整える複合的なサイクルを設計すると、床を安定的に保てます。
高頻度利用施設では月1回程度の全体点検に加え、部分的なスポット処置を併用するとよいでしょう。
まとめ
体育館の床は見た目だけでなく、使う人の安全性と競技性、そして施設の信頼を左右する最前線のインフラです。
文部科学省の通知を正しく理解し、ワックスや水拭きの旧来の習慣を脱し、水分や残留を残さないノンワックス・ノンスリップ系製品と日常清掃の組み合わせでコンディションを安定させることが、事故を防ぎ、長持ちさせる唯一の現実的な道です。
私たちは現場の実態を丁寧に聞き、最適な製品の組み合わせ、検査と塗布のサイクル、記録管理と先回りの調整までを含むカスタムプランを共に作り、施工とその後の継続的な管理を伴走します。まずはあなたの体育館の現状、利用形態、課題を教えてください。
安全性を確保しながら使い続けられる床を設計するための具体的な提案書を無料で準備し、実行への最初の一歩を一緒に踏み出しましょう。

































































































